山形県のクラフトビール醸造所まとめ!さくらんぼ・蕎麦・ラ・フランスを醸す個性派ブルワリーを徹底紹介
山形といえば、さくらんぼと日本酒。
けれど山形は、ビールの原料であるホップが穫れる土地でもあります。
キリンビールが山形の農家とホップの契約栽培を始めたのは、1939年から1945年にかけてのこと。
長井市はホップの栽培が古くから盛んな地域で、白鷹町には60年以上ホップを育て続けている農家があります。
山形の醸造所は、県内のホップと地元の果物や穀物を組み合わせています。
生まれるのは、山形でしか飲めないビールです。
樹氷をイメージした白いビール。
更科蕎麦を使ったピルスナー。
ラ・フランスや薔薇を副原料にした一杯。
どれも、山形の畑で採れたものがそのまま原料になっています。
「山形にはどんな醸造所があるのだろう?」
「温泉旅行のついでに立ち寄れる場所はあるだろうか?」
「山形のビールに合う料理を知りたい」
この記事では、山形県のクラフトビール醸造所をエリア別に紹介します。
醸造所ごとの成り立ちから、山形グルメとのペアリングまで。
読み終えるころには、山形のビール旅の行き先が決まっているはずです。
目次
庄内エリアの醸造所

日本海と鳥海山にはさまれ、庄内平野が広がる庄内地方。
日本酒や焼酎の醸造が古くから盛んな土地に、新しい造り手が加わりました。
米どころらしく、庄内産の米を使ったビールが生まれています。
酒田トラディショナルビール(酒田市)
2024年に酒田市で誕生したブルワリーです。
醸造所があるのは、金属管を製造するパイプ・ラインエンジニアリング株式会社の酒田工場敷地内。
配管加工のノウハウを活かし、発酵タンクなどの醸造装置まで自社で開発しています。
ブランド名には、酒田で古くから続く酒造りの伝統に加わりたい、という思いが込められています。
定番は4種類。
庄内産つや姫を使い、4種のホップの柑橘香で華やかに仕上げた「Pale Ale」。
ホップを贅沢に使ったボディ感のある「IPA」。
白ワインのような香りでアルコール度数低めの「White Ale」。
モルトの深みと香ばしさが楽しめる「Stout」。
山形伝統の紅花を使った「BENIBANA ALE」も生まれました。
紅花染めの過程で流されてしまう黄色の色素に光を当てたセゾンで、紅花推進協議会との協力から生まれた一杯です。
日本地ビール協会が主催するJapan Great Beer Awardsでは、IPAとWhite Ale、BENIBANA ALEが銀賞を受賞しています。
ビールは醸造所内でも購入できます。
プリンセスエール(庄内町)
庄内町の酒販店「山形の地酒うめかわ」が企画したオリジナルビールです。
山形県産米つや姫を焙煎して副原料に使い、米の甘みが感じられる味わいに仕上げています。
構想から5年、試行錯誤を重ねて生まれました。
プリンセスエールは山形県内に醸造設備を持たず、新潟県の新潟麦酒に製造を委託しています。
企画とレシピは山形、醸造は新潟という形です。
新潟麦酒は日本で初めて瓶内二次発酵を採り入れたブルワリーで、もっちりとした泡は瓶の中の二次発酵から生まれます。
アルコール分は4.5%、内容量は310ml。
姉妹品の「タートルエール」は、庄内町生まれの米「亀ノ尾」を使ったライトな黒ビールです。
2本を1対1で合わせると、亀ノ尾と、亀ノ尾の子孫にあたるつや姫が同じグラスに並びます。
山形市・天童市エリアの醸造所

山形市と天童市には、県内でもっとも醸造所が集まっています。
蔵王の湧水で醸す新しい醸造所から、旅館の中で四半世紀続く醸造所まで顔ぶれはさまざまです。
温泉地と重なるため、湯上がりの一杯を目当てに訪ねる楽しみもあります。
ZAO BREWERY(山形市)
2022年に誕生した、山形市で初めてのクラフトビール醸造所です。
運営するのは、蔵王地区で25年続く食品卸会社の山里菜有限会社。
蔵王の魅力を新しいかたちで発信したい、という思いから立ち上がりました。
仕込み水は、蔵王の大自然が育んだ湧水。
ビールの主原料の約9割は水であるという考えから、水にこだわった造りをしています。
看板は「SNOW MONSTER」。
蔵王の冬の風物詩である樹氷をイメージした、白いホワイトエールです。
苦味を抑えた優しい甘みで、見た目のインパクトと味わいの両方にこだわった一杯になっています。
ほかにも、山形を代表するさくらんぼを使った「YAMAGATA さくらんぼ ALE」、蔵王の松と杜をイメージした「MATSUNOMORI ALE」、アルコール度数7%の「ZAO CLASSIC IPA」が並びます。
併設のレストラン「Crang Dining」では、山形の食材を使った蔵王オリジナルの料理を味わえます。
屋上にはビアテラスもあり、蔵王の空気とともにビールを楽しめます。
天童ブルワリー(天童市)
天童温泉の旅館「湯坊いちらく」の館内にある醸造所です。
1999年、「湯あがりに、一杯」をコンセプトに誕生しました。
旅館の中に醸造所があるという、全国的にも珍しい形です。
仕込みに使うのは天童の豊かな伏流水。
伏流水に、山形が誇る食材を掛け合わせています。
代表格は「蕎麦ドライ」。
山形県産の更科蕎麦を使ったピルスナーで、スッキリした飲み口に香ばしい蕎麦の風味が重なります。
クラフトビールの口コミサイト「Beer365」で全国1位にランクインしたこともある一杯です。
さくらんぼの王様と呼ばれる佐藤錦を贅沢に使った「天使のさくらんぼ」もあります。
甘酸っぱくフルーティーで、ビールが苦手な人にもすすめられる味わいです。
毎年夏には、白鷹町で朝摘みしたホップをその日のうちに仕込むフレッシュホップビールを造っています。
出来立ての樽生は、日帰り入浴の利用者も味わえます。
Brewlab.108(天童市)
2019年に天童市で創業し、2020年に販売を始めたマイクロブルワリーです。
将棋の駒で知られる観光施設「将棋むら天童タワー」の中にあります。
屋号は、醸造するBrewingと研究室のLaboratoryを組み合わせた造語。
屋号にはさらに、煩悩の数と同じ108種類のテイストを世に出したい、という願いも重なっています。
代表の加藤克明さんがビール造りを志したきっかけは、サウジアラビアでの禁酒生活でした。
移住先の山形で天童市の醸造関係者と出会い、技術を学んでいます。
銘柄には番号が振られています。
デーツとカルダモンを使った「#008 Date」、米麹と清酒酵母で仕込む「#006 Koji」、自ら育てた紅花を使う「#001 Mogami Benibana」といった具合です。
インターナショナル・ビアカップ2020では、清酒酵母部門で金賞、ジャパンオリジン部門でカテゴリーチャンピオンを受賞しました。
山形県産の果樹や特産品を副原料に、新しい味を探し続けています。
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村山市・西川町エリアの醸造所

最上川が流れる村山市と、月山の麓に広がる西川町。
どちらも山と川の恵みが濃い土地です。
雪解け水が育てた水を使う醸造所が、それぞれの町にあります。
HAKUTO BREWING(村山市)
2025年7月、村山市河島山の麓にオープンした新しい醸造所です。
立ち上げたのは、村山市でトレーラー型のコーヒースタンドを営む焙煎士と、ブランドづくりに携わってきたデザイナーの2人。
地元のために何かできないか、という思いが出発点になりました。
ビール造りは、島根県江津市の石見麦酒で学びました。
泊まり込みの研修を経て身につけたのは、小規模なスペースでも醸造できる「石見式醸造法」。
山形県ではまだ珍しい造り方です。
屋号のHAKUTOは白兎のこと。
村山市の地形がうさぎの形をしていることに由来します。
仕込みには、朝日連峰と月山のブナ林に蓄えられた水を使います。
基本のラインナップは、コーヒーアンバーエール、バラレッドエール、米ホワイトIPA、蕎麦セゾンの4種類。
薔薇の名産地でもある村山市らしく、地元の素材が並びます。
月山ビール(西川町)
1998年から、道の駅にしかわの「月山銘水館」で造られている地ビールです。
運営するのは西川町総合開発株式会社。
国道112号沿いにあり、車での旅の途中に立ち寄りやすい場所です。
仕込み水は、名水百選に選ばれた月山山麓湧水群の湧水。
超軟水のため、麦芽やホップの味をまっすぐ引き出します。
ドイツのビール純粋令にならい、原料は麦芽・ホップ・酵母・水だけに絞っています。
定番はピルスナーとミュンヒナーの2種類。季節限定のコクワと、ギフト向けのアルトもあります。
醸造工場を眺めながら、レストランで味わえます。
人気メニューは「牛肉の地ビール煮」。
月山ビールで漬け込んだ牛肉を、ほろほろになるまで煮込んだ一皿です。
スナックコーナーには、麦汁を使った「地ビールソフトクリーム」もあります。
ノンアルコールなので、運転する人や子どもでも楽しめます。
敷地内には日帰り温泉「水沢温泉館」もあり、ゆっくり滞在できます。
置賜エリアの醸造所

米沢牛と上杉家の城下町で知られる置賜地方。
長井市と米沢市に、それぞれ小さな醸造所があります。
どちらもタップルームを持たず、造ることに集中しているのが特徴です。
長井ブルワリークラフトマン(長井市)
2017年に立ち上がり、2018年3月に酒類製造免許を取得しました。
運営する合同会社萩志会クラフトマンは、5人のメンバーで動いています。
うち4人は自動車整備や土木の仕事に携わり、もうひとりは現代美術のアーティストという珍しい構成です。
仕込み水は、朝日連峰を水源とする市内の地下水。
硬度18という全国的にも珍しい超軟水で、口当たりがとても滑らかに仕上がります。
長井市は古くからホップの栽培が盛んな地域でもあります。
ホップに適した地質を活かし、自家栽培のホップも使っています。
銘柄には山形の食材が並びます。
柚子とホップの香りに塩気が効いた「ゆず塩ヘイジーIPA」、フルーツの女王を使った「ラ・フランス Queen white ale」、桃を使った「ピーチ ウィートIPA」。
山形で親しまれる野草を使った「ひょう」や、大豆の甘みが香る「きなこ」といった、ほかでは見かけない一杯もあります。
米沢ジャックスブルワリー(米沢市)
2018年春、米沢市南部の田園地帯にオープンしたマイクロブルワリーです。
代表の槙山秀都さんが、小ロットで多彩なビールを造り続けています。
定番は4種類。
ゴールデンエール、ペールエール、IPA、セッションIPAという王道の顔ぶれです。
限定醸造では、さくらんぼを使った「ほんのりさくらんぼ」、蕎麦を使った「二八蕎麦エール ツインズ」、宮城のやくらいビールとのコラボレーションなど、季節や地元の素材を活かした一杯が次々に登場します。
醸造所にタップルームはなく、ボトルの小売りも行っていません。
米沢市内や山形市内の飲食店、酒販店、オンラインストアで味わえます。
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山形はホップが育つ土地

山形のクラフトビールを語るうえで外せないのが、ホップです。
第二次世界大戦のさなか、キリンビールは福島県と山形県の農家とホップの契約栽培を始めました。
農家から買い入れたホップを集荷・加工する処理場が置かれ、技術員が常駐して栽培指導にあたったといいます。
山形は、日本のビール産業を原料の側から支えてきた土地でもあるのです。
ホップ栽培は、今も途切れていません。
長井市は古くからホップの栽培が盛んな地域で、長井ブルワリークラフトマンは自家栽培のホップを使っています。
白鷹町では、60年以上にわたってホップを育て続けている農家があります。
天童ブルワリーは、白鷹町のホップ農家と手を組みました。
真夏に朝摘みしたホップを、その日のうちに仕込む。
約2か月の醸造を経て、一年で今だけのフレッシュホップビールが生まれます。
ホップという言葉の向こう側に、山形の畑があります。
山形のビールを飲むときは、ホップの香りの出どころにも思いを馳せてみてください。
山形の醸造所が手を組んだ「山形県クラフトビール普及協会」

2024年4月23日、クラフトビールの日。
天童温泉の湯坊いちらくで、「山形県クラフトビール普及協会」の設立発表式が開かれました。
設立までは個々に活動していた県内の醸造所が、チームを組みました。
掲げた目標は3つ。
品質向上、認知度向上、普及促進。
工場見学や研修、醸造技術交流会を通じて互いに切磋琢磨し、ホップ収穫祭やオクトーバーフェストといったイベントも協会として開いていく方針です。
山形県は日本酒やワインの産地として「美酒県」を掲げてきました。
美酒県の看板にクラフトビールを加えようとする動きが、県全体で始まっています。
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山形クラフトビール巡りのポイント

山形の醸造所は、温泉地や道の駅と重なる場所にあることが多いのが特徴です。
観光の予定に組み込みやすい配置になっています。
旅の計画を立てるときに押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
醸造所併設の店で味わう
造りたてのビールは、瓶や缶では味わえない鮮度があります。
山形市のZAO BREWERYには併設レストラン「Crang Dining」とビアテラスがあります。
西川町の月山銘水館では、醸造工場を眺めながら飲めます。
営業時間や定休日は季節によって変わることがあります。
訪問前に公式サイトで最新の情報を確認しましょう。
温泉と組み合わせて楽しむ
天童ブルワリーは、天童温泉の旅館「湯坊いちらく」の中にあります。
湯上がりに出来立ての樽生を味わえるのは、宿泊した人だけの体験です。
西川町の道の駅にしかわにも、日帰り温泉「水沢温泉館」が併設されています。
温泉とビールをセットで組み立てられるのが、山形ならではの楽しみ方です。
通販で取り寄せる
タップルームを持たない醸造所も少なくありません。
長井ブルワリークラフトマンや米沢ジャックスブルワリーは、オンラインストアや県内の酒販店で購入できます。
ふるさと納税の返礼品として登場する銘柄もあります。
気になる醸造所を見つけたら、まずは飲み比べセットから試してみましょう。
山形のビールに合うおすすめペアリング

山形は、米も肉も果物も蕎麦も揃った食の宝庫です。
地元の料理と地元のビールを合わせると、どちらの魅力も引き立ちます。
山形ならではの組み合わせを4つ紹介します。
芋煮×アンバーエール
里芋と牛肉を醤油で煮込む、山形を代表する秋の風物詩。
甘辛い煮汁には、モルトの香ばしさとコクがあるアンバーエールがよく合います。
河原で鍋を囲みながらの一杯は、山形の秋そのものです。
米沢牛のステーキ×IPA
きめ細やかな霜降りが自慢の米沢牛。
脂の甘みには、ホップの苦みがしっかりしたIPAがぴったりです。
口の中をすっきりと切り替えてくれるので、次の一切れが進みます。
板そば×ピルスナー
木の板に盛られた、山形名物の田舎そば。
香りとコシを楽しむそばには、キレのあるピルスナーが寄り添います。
蕎麦を使ったビールと合わせれば、そば尽くしの食卓になります。
だし×ホワイトエール
きゅうりやなす、みょうがを刻んで和える、山形の夏の郷土料理「だし」。
さっぱりした青い香りには、小麦を使ったホワイトエールのまろやかさが合います。
冷やしたごはんにのせて、冷えたビールとどうぞ。
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まとめ

山形県のクラフトビール醸造所は、庄内から置賜まで県内各地にあります。
樹氷を映した白いビールのZAO BREWERY、旅館の中で醸す天童ブルワリー、月山の水で造る月山ビール。
番号で銘柄を並べるBrewlab.108や、うさぎの町から始まったHAKUTO BREWINGまで、個性は実に多彩です。
共通しているのは、山形の素材を使うという姿勢。
さくらんぼ、ラ・フランス、更科蕎麦、つや姫、紅花、そして県内で育つホップ。
土地の恵みが、そのままビールの個性になっています。
山形を訪れる機会があれば、ぜひ醸造所や温泉に立ち寄ってみてください。
芋煮や米沢牛とのペアリングも楽しみながら、山形のクラフトビールを存分に味わいましょう。
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